調査の概要
米国のソフト会社ServiceTitanが、2026年3月30日に「2026 Commercial Specialty Contractor Industry Report」を公表しました(この記事は、2026年4月のFor Construction Pros の報道を参照しています)。
調査対象は、米国で商業施設を手がける専門工事会社(電気・空調・配管などのサブコン)です。経営者・役員・部長級を合わせて1,000人以上が回答しています。(日本の総合建設会社とはイメージが若干違うようです)
調査のなかで、AIについてこう報告されています。
- 事業への効果が測れる形で出ている … 38%(2025年は17%)
- AIを使っている業務は、原価見積・予算策定 24%、入札の管理 22%
1年で17%から38%へ、2倍以上に増えています。ただし「AIを使っている会社」ではなく「効果が測れる形で出ている会社」の割合である点に注意してください。試したけれど効果が出ていない会社は、この38%に入っていません。また、回答者全体に対する割合であって、AIを導入した会社に対する割合ではありません。
なお、この調査を公表したServiceTitanは、設備工事や現場サービスの事業者向けに業務ソフトを販売している会社です。調査の結果が、自社の商売に沿う方向に出やすい立場にあります。実際の調査は第三者の調査会社(Thrive Analytics)が行っていますが、数字はわかりやすい成果を目立たせている可能性があります。
使い所は現場ではなく事務所
AIを使っている業務の上位2つが原価見積・予算策定(24%)と入札の管理(22%)である点が、この調査でいちばん意外なところだと思います。
AIというと、現場のカメラで安全確認をする、重機を自動で動かす、といった話が浮かびがちです。ところが実際にAIが使われているのは、事務所で人が書類と向き合っている事務作業のほうでした。
理由は3つ考えられます。
- 設備投資が要らない
- 間違ってもすぐ気づける
- 対応すべき量が多い
このようなポイントがAIへの置き換えのハードルを下げ、活用が活発になっているようです。
背景は人件費の上昇
同じ調査で、71%の会社が賃金の上昇を報告しています(前年は55%)。あわせて、材料費の上昇と人手不足が利益を圧迫していると報告されています(こちらは割合の数字が公表されていません)。
人が足りず、賃金も上がっている。この状況で、人を増やさずに処理量を増やす手段としてAIが選ばれている、という流れです。日本の建設業も同じ状況にありますので、十分参考にできる情報といえるでしょう。
日本の中小建設会社が参考にできるところ
見積・積算にAIを使う、という方向は参考になります。ただし、海外の事例をそのまま持ち込めない部分があります。
海外で使われている専用のソフトは、日本の意匠図・施工図とは表記も単位も違いますので、同じソフトがそのまま使えるとは限りません。
一方で、専用ソフトを買わなくてもできることもあります。
- 過去の見積書を渡して、似た条件の案件の単価を探させる
- 見積書の合計と内訳が合っているかを確認させる
- 仕様書から、見積に必要な条件を書き出させる
どれも、いま手元にあるファイルと、いま契約しているAI(ChatGPT・Claude)でできる範囲です。まずこの範囲で試してから、専用ソフトを検討する順番をおすすめします。
気をつけること
① 個別の成功例より、全体の割合を見てください
「AIで積算が30分で終わった」といった記事を検索すると、その大半は積算ソフトを売っている会社のブログです。会社名が入っていても、多くはそのソフトの利用者の声として掲載されたものになります。
個別の成功例より、業界全体で何割の会社が効果を出しているかのほうが、判断の材料になります。
② 見積の金額をAIに入れる前に、設定を確認してください
見積書には、取引先の社名、単価、原価が入っています。AIに渡す前に、いま使っているプランと設定を確認してください。
確認の手順は別の記事で整理していますので、単価の入ったファイルを渡す前に目を通してください。
③ 出てきた数字は、必ず自分で計算してください
AIは、項目のひとつひとつが正しく見えるのに、合計だけが合っていないことがあります。見積は金額がそのまま外に出ますので、電卓か表計算での確認を省かないでください。
次の一歩
- 過去に作った見積書を3件、手元に出す
- うち1件をAIに渡して、合計と内訳が合っているかを確認させる
- 自分で計算した結果と見比べる
- 合っていたか、何分かかったかを記録する
いきなり積算の自動化をしようとすると、専用ソフトの検討が先に立って話が進まなくなってしまいがちかと思いますが、いまあるソフト・ファイルで試せるところから始めてみましょう。
出典
- 2026 Commercial Specialty Contractor Industry Report(ServiceTitan) https://www.servicetitan.com/guides/commercial-construction-report-2026
- Industry Report Finds AI Adoption Accelerating Across Commercial Construction(For Construction Pros、2026年4月) https://www.forconstructionpros.com/construction-technology/project-management/article/22963634/servicetitan-industry-report-finds-ai-adoption-accelerating-across-commercial-construction